完全子法人が支払う配当等の法定調書の提出義務はあるか?
令和4年度税制改正にて、完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例(所法177)が創設されたのは記憶に新しいかと思います。この所法177により、一定の資本関係がある法人間の配当等に対して所得税が課されなくなりました。つまり、配当等支払い時の源泉徴収が不要になったのです。ここで一つの疑問が浮かび上がります。
「源泉徴収が不要になれば、法定調書及び合計表の提出も不要になるのではないか?」
ただ、法定調書及び合計表の提出が必要な場合には所法177の配当等の支払金額を含めた支払総額を合計表に記載する必要があり、「所法177適用でも合計表の提出は必要になるのではないか?」と考えてもおかしくないです。法定調書の提出は税額に直接的に影響のあるものではありませんが、罰則規定が設けられていることもあり、条文を一から確認してみました。今回はその検討過程をまとめていきます。
所法177の適用がある場合には法定調書の提出は不要
結論になりますが、所法177の適用がある場合には法定調書の提出は不要です。
ただし、合計表に関しては注意が必要です。
配当等の支払いに際して、所法177の適用を受けない配当等があるか否かで変わってきます。
所法177の適用を受ける配当等のみ→合計表の提出不要
所法177の適用を受けない配当等あり→合計表の提出必要
法定調書及び合計表の提出要否の根拠
まずは、配当等の支払いに際して法定調書の提出が必要な理由を確認していきたいと思います。
法定調書の提出が必要となる根拠は所法225①二になります。
次の各号に掲げる者は、財務省令で定めるところにより、当該各号に規定する支払(第十号及び第十一号に規定する交付並びに第十三号に規定する差金等決済を含む。)に関する調書を、その支払(当該交付及び当該差金等決済を含む。)の確定した日(第一号又は第八号に規定する支払に関する調書のうち無記名の公社債の利子又は無記名の貸付信託、公社債投資信託若しくは公募公社債等運用投資信託の受益証券に係る収益の分配に関するもの及び第二号又は第八号に規定する支払に関する調書のうち無記名株式等の剰余金の配当(第二十四条第一項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配に関するものについては、その支払をした日。以下この項において同じ。)の属する年の翌年一月三十一日まで(第二号に規定する支払に関する調書並びに第八号に規定する支払に関する調書のうち第二号に規定する配当等及び第百六十一条第一項第四号(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得に関するものについてはその支払の確定した日から一月以内とし、第十四号に規定する支払に関する調書についてはその支払の確定した日の属する月の翌月末日までとする。)に、税務署長に提出しなければならない。
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二 居住者又は内国法人に対し国内において第二十四条第一項に規定する配当等の支払をする者(当該配当等のうち、国外において発行された投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)若しくは特定受益証券発行信託の受益権又は株式(資産の流動化に関する法律第二条第五項(定義)に規定する優先出資、公募公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信託の受益権及び社債的受益権を含む。)に係るもので居住者又は内国法人に対して支払われるものの国内における支払の取扱者を含む。)
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上記の条文内にもある通り、調書の記載方法等は財務省令で定められています。
具体的に言うと、所規83にて法定調書の記載方法、所規91及び所規別表第五(三)にて法定調書の様式定められています。
次に、所法177の場合に法定調書が不要になる根拠を見ていきましょう。
所規83②五では、以下の通り規定されています。
前項の場合において、次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該各号の規定に該当する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、基金利息又は収益の分配に係る同項の調書は、提出することを要しない。
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五 配当等につき法第十一条第一項(公共法人等に係る非課税)、第百七十六条第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)、第百七十七条(完全子法人株式等に係る配当等の課税の特例)若しくは第百八十条の二第一項若しくは第二項(信託財産に係る利子等の課税の特例)の規定又は租税特別措置法第八条第一項から第三項まで(金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の不適用)、第九条の四(特定の投資法人等の運用財産等に係る利子等の課税の特例)、第九条の四の二第一項(上場証券投資信託等の償還金等に係る課税の特例)若しくは第九条の五第一項(公募株式等証券投資信託の受益権を買い取つた金融商品取引業者等が支払を受ける収益の分配に係る源泉徴収の特例)の規定の適用がある場合
所法177の規定の適用がある場合には、配当等の法定調書を提出する必要がないことがわかります。
では、合計表の提出に関してはどうでしょうか?
合計表の提出が必要となる根拠は、所規別表第五(三)の備考に規定があります。
備考
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4 合計表をこの様式に準じて作成し、添付すること。
法定調書の添付資料として、合計表の提出が必要だとわかります。
しかし裏を返せば、提出する法定調書が一切なければ、添付資料としての合計表の提出は不要ということでもあります。
以上の通り、法定調書の提出の有無により合計表の提出の要否が変わってきます。
管理人の考え
法定調書の提出背景には、課税所得捕捉率の不公平の問題があります。非課税や少額であれば影響も小さいことから、一定の範囲内で法定調書の提出不要の規定が設けられていると考えます。
また、合計表の提出要否は、配当等の支払いだけではなく、その他の法定調書にも基本的には同様のことが言えると考えます。全てを確認したわけではありませんが、少なくとも給与所得の源泉徴収票や報酬等の支払調書に関しても所規別表備考で合計表添付の旨の記載がされていました。つまり、提出すべき法定調書がない場合には、これらの合計表の提出も不要と考えます。
さいごに
法定調書は、実務では後回しになる論点です。税額には直接的に影響ないし、法定調書を対象とした調査もほとんどないことから、提出が必要な書類ではあるけれどもこと細かに条文を調べることはないかと思います。実際に条文を調べてみて、他の条文を参照することが多く、条文を行ったり来たりして読みづらさを感じました。ただ、何が必要で何が不要だったかについて一定の結論を出せたのは条文を確認した甲斐がありました。提出が不要なものをわざわざ提出してしまい、いらぬ指摘を受けることを避けることも実務では重要だと思っています。
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